~特定登録調査機関制度のご案内~出願公開前に先行技術調査報告を得られる制度(2021.10.28)

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特定登録調査機関制度とは

特許庁は、特定登録調査機関として登録を受けることによって、審査請求されていない特許出願に対して、特許出願人等からの依頼に応じて先行技術調査を行い、その調査報告を交付することを可能とする特定登録調査機関制度を導入しました。
この制度は、2015年4月に改正され、出願から出願審査請求前(出願から3年間)に利用できる使い易い制度になっています。特定登録調査機関制度は、端的にいうと「登録調査機関」の調査能力を民間に開放したものです。

特許庁のホームページでは、特定登録調査機関について以下のような説明があります。

この制度は、特許庁の先行技術調査の外注先である登録調査機関の能力を出願人等も利用できるようにし、出願人による効率的な審査請求を促すための環境を整備することを目的とするものです。
登録調査機関のうち特に特許庁長官の登録を受けた者(特定登録調査機関)は、出願人等の求めに応じ特許出願について先行技術調査を行い、その結果を記載した調査報告を交付できることとし、特定登録調査機関が交付する調査報告を提示して審査請求をしたときは、その手数料が軽減されます。

https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/toroku/tokuteitouroku_01.html

弊社では、お客様の依頼により、弊社の登録区分の審査請求前の出願について先行技術調査を行っています。

制度を利用するメリットについて

Q特定登録調査機関制度を利用するメリットとはどのようなものでしょうか

A この制度は、出願をして、審査請求をしていない場合に利用できます。つまり、審査請求前に登録調査機関による特許庁への先行技術調査報告と同品質の調査報告を得ることができます。
この調査報告の結果を活用することで、優先期限内かつ未公開の状態で権利化の見通しがつき、さまざまな戦略を検討することができます。
具体的には、調査報告に基づき、自発補正を行って審査請求後の手続負担を軽減したり、発明の内容を補充する国内優先権主張出願を行ったり、公開前に取下げて秘匿化したり、内容を追加したあらたな出願を行ったり、外国出願の可否を検討したりすることが可能となります。
また、早期審査を請求する際に必要となる早期審査事情説明書の先行技術の開示や対比説明を、特定登録調査機関の調査報告により代替することができます。
さらに、審査請求を行う場合には、審査請求料の約20%が軽減されます。

特許庁のホームページでは、主なメリットとして以下の7つが示されています。

https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/toroku/tokutei_toroku_202102.html

これらのメリットから特定登録調査機関制度を利用する場面としては、自社製品等を保護する強力な権利を確保したい場合、早期に様々な特許戦略を検討したい場合、外国出願の出願可否を効率的に検討したい場合、審査請求前に高レベル・高品質な調査を行いたい場合、特許関係に係る経費のコスパを良くしたい場合などが想定されるでしょう。

Qなぜ品質の高い調査ができるのでしょうか

A 特許庁は、審査に必要な先行技術調査の一部を「工業所有権に関する手続等の特例に関する法律」に基づいて登録された「登録調査機関」に外注しており、先行技術調査の分野は技術分野毎(39区分)に分かれています。
登録調査機関の調査業務実施者資格は「工業所有権に関する手続等の特例に関する法律」に規定する独立行政法人工業所有権情報・研修館が行う「調査業務実施者育成研修(約2か月)」を修了後同法に規定される「調査業務実施者」(サーチャー)となります。
特定登録調査機関制度でも、資格を取得したサーチャーが特許庁に報告するのと同様の手法・品質で調査を行います。

Q制度を利用する条件と期間について

A ①特許庁に特許出願済みであること、②審査請求前であることが条件です。
つまり、利用可能な期間は、特許出願をしてから、審査請求を行う前となります。
権利化の見通しを立て、出願戦略を検討するためには、優先期間内の未公開の状態、特に出願をして可能な限り早期に本制度を利用することが好ましいでしょう。

Q調査費用と審査請求料の軽減について

A 調査費用については、以下の通りです。
請求項が10の場合、内国132,000円、内国+外国特許文献検索215,050円となります。

内国 104,500 円 + 請求項数 × 2,750 円 / 件(税込)
外国特許文献検索   55,550 円 + 請求項数 × 2,750 円 / 件(税込)
  • ※1:請求項数が11以上の案件につきましては別途お見積りさせていただく場合がございます。
  • ※2:英語特許文献(国際公開・米国・欧州特許公報)

審査請求時に出願審査請求書に調査報告番号を記載することで、審査請求の手数料の軽減を受けることができます。請求項10の場合で36,000円、つまり約20%のコストを削減できることになります。

Q調査可能な分野と対象区分の見分け方について

A 弊社で調査可能な分野は以下の通りです。


調査可能な分野(登録区分)

区分1 計測 時計・計測一般、測長・測量、距離測定、流れ・力の測定、電気測定、物理的測定、光学的測定等
区分3 分析診断 機械分析、化学分析、診断機器、画像診断等
区分6 事務機器 電子写真(工程・制御)、印刷、インクジェットプリンター、プリンター一般等
区分7 自然資源 農機、栽培、木材、土木施工、土木構造物等
区分8 アミューズメント パチンコ・スロットマシン、ゲーム、運動・遊具、事務用品等
区分10 自動制御 制御・警報、電動車両の制御、交通システム、電動機・発電機、電動機・発電機制御等
区分14 生産機械 研削加工、工作機械一般、溶接、ロボティクス、制御・組立等
区分15 搬送 運搬・実装、扛重、コネクタ、スイッチ等
区分17 生活機器 生活家電、照明回路、照明機器、生活用品、チェック装置等
区分18 熱機器 給湯、管一般、調理、加熱、空調、冷凍等
区分19 医療機器 医薬注入、物理療法、手術、補綴等
区分23 半導体機器 半導体素子、半導体集積回路、半導体素子の製造、半導体素子の実装、熱電素子、超電導素子、圧電素子、磁気抵抗効果素子等
区分24 生命工学・医療 化合物含有医薬、蛋白・抗原抗体含有医薬、製剤・医療材料、化粧料、バイオテクノロジー、微生物・酵素、食品等
区分25 有機化学 有機化合物の製法、農薬・染料、石油化学、応用有機材料、インク、接着剤、固体廃棄物、乳化・分散・マイクロカプセル等
区分27 プラスチック工学 高分子処理、樹脂成形、タイヤ、発泡成形等
区分29 繊維・積層体 繊維、積層体、塗装、皮革、紙等
区分31 電子商取引 電子商取引、業務システム、金融・決済、検索装置、言語処理等
区分32 インターフェイス マンマシンインターフェイス、計算機細部等
区分33 情報処理 ソフト開発・AI、ハード・中核ソフト、ICカード、メモリ回路・信憑性、メモリ制御、コンピュータセキュリティ、DRM、暗号、デバイス転送制御等
区分34 伝送システム 移動体通信、電話システム、警報、基礎伝送回路、パルス回路、増幅器等
区分35 電力システム 送配電、充放電、電路の調整(インバータ、コンバータ、電流・電圧の調整)、電線の据付等
区分36 デジタル通信 データ伝送、デジタル変調、符号変換、伝送方式、マイクロ波、データネットワーク等
区分39 電気機器 抵抗器、磁石・インダクタンス、コンデンサ、印刷回路とその製造、電気部品の実装、電気装置の筐体等

対象区分については、公開案件の場合は公開公報の筆頭テーマコード(筆頭IPC)で判断されます。
未公開案件の場合、願書に記載の筆頭国際特許分類で判断します。
対象となる案件かどうかはお問い合わせを頂ければ回答をすることができます。

Q利用時の流れについて

A ①特許庁に特許出願済みであること、審査請求前であることが条件です。
②お客様の依頼により、弊社の登録区分の審査請求前の出願について先行技術調査を行い、検索報告書を作成します。
③作成した報告書はお客様への交付と同時に、特許庁にも提出されます。
④審査請求料を軽減するには、審査請求書に調査報告番号を記載する必要がります。
※審査請求書に報告書番号を記載しないと、審査官に報告書の内容は公開されません。この場合、審査請求料の軽減は受けることができません。

Qお申し込みから調査報告の流れについて

A お申し込みから調査報告の流れについて以下に示します。
調査依頼書兼確認書記入例)」「出願書類」「受領書」を弊社宛にお送りください(電子データでも可)。弊社で受任できる場合には、受任請書を送付いたします。調査には通常3~4週間程度の時間を頂いております。納期につきましては、ご相談を頂ければ柔軟に対応致します。調査報告については、調査報告書、提示文献、補足コメントなどを紙媒体及び電子媒体の形式で報告致します。

【調査報告書の内容】

調査報告書には、①特許請求の範囲、②検索論論理式、③提示文献の記載、④その他記事、⑤提示文献一式が含まれています(サンプルはこちら)。
また、弊社独自のサービスとして、補足コメント及び対比表を御依頼者様のみに報告致します(サンプルはこちら)(特許庁には報告されません)。
補足コメントでは、検索で発見された先行技術文献に基づいて、現在の各請求項について、新規性・進歩性の有無(同一の構成を有する文献の有無、進歩性を否定される可能性)について、検索者の観点から報告します。

特定登録調査機関制度の活用事例

ここで、特定登録調査機関制度を利用した仮想事例を紹介します。
なお、これらの事例は、あくまでも仮想的なものであり、本制度を利用した場合に、必ず同じような結果が得られるわけではないことにご留意下さい。

①実施例補充によって広い権利範囲の取得に成功
調査報告書では、新規性・進歩性あり、サポート要件違反の可能性を指摘されました。提案事項として、実施例を追加した場合、権利範囲を広くすることが可能であることが示唆されたため、出願人は、実施例を補充してPCT出願をし、国内移行、早期審査請求を行う対応をとりました。その結果、広い権利を取得できました。このケースでは、その後の外国出願を安心してできたことも考慮すると本制度の利用が有意義であったといえます。

②確実に権利取得、面接審査に利用
調査報告書で、請求項1は進歩性なし。請求項2は、新規性・進歩性ありという結果が示されました。出願人は、請求項1を請求項2で限定する補正を行った上で、面接審査で調査報告書及び提示文献を説明する対応をとりました。その結果、拒絶理由なしで特許査定となりました。

③製品発売前に広い権利の取得に成功
依頼者は、近日中に新製品を発売するが、発売前に特許権の取得希望がありました。調査報告書では、新規性・進歩性ありとの結果が示されていました。また、補足資料では、先行技術文献を検討すると、請求項1の上位概念化が可能であるとの提案事項が示されました。出願人は、請求項1を上位概念に補正、早期審査請求をするという対応をとりました。早期審査請求の適用要件の先行技術文献の提示として、特定登録調査機関の調査報告書を利用することが可能でした。その結果、審査がスムーズに進み、上位概念化した請求項1の内容で権利化に成功しました。

特定登録調査機関制度ユーザーの声

特許庁のホームページでは、特定登録調査機関制度ユーザーの声が紹介されています。質の高い調査報告書が比較的低いコストで、特許庁の審査前に得ることができること、調査結果を出願戦略に効果的に活用していること、トータルで見るとコストを削減できることなどが、弊社での利用者からも同様にメリットとして挙げられています。

https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/toroku/document/tokutei_toroku_202102/02.pdf