知的財産権による画面ユーザーインターフェースの保護
1.画面ユーザーインターフェースに関する知的財産権
近年では、スマートフォン、タブレット端末が普及し、こうした機器で動作するアプリケーションの数も日々増大しております。今後のビジネスにおいてもアプリケーションの活用場面は広がりを見せ、その重要性は益々高まっていくものと予想されます。
アプリケーションの使い勝手は、特にコンピュータと利用者との間で情報をやり取りする画面の表示、操作等の仕組みである画面ユーザーインターフェース(以下、画面UI)の影響が大きく、画面UIの操作性やデザイン性を向上させることが、他社との差別化を図り、アプリケーションの優位性を得る上でも一層重要となっております。
一方、画面UIはその内容や動作が外部から容易に把握されるがために真似されやすく、人気のあるアプリケーションの画面UIは直ちに模倣の対象となる傾向にあります。こうした画面UIの模倣を防ぎ、アプリケーションの優位性を維持するための一つの手段として、知的財産権の活用が考えられます。
具体的には、画面UIは、ソフトウェア関連発明の特許権、画面デザインの意匠権による保護の対象となります。今回はその中でも本年3月に意匠審査基準が改訂され、従来よりも保護の対象が拡充された意匠権による画面デザインの保護についてご紹介させて頂きます。
2.意匠制度による画面デザインの保護
従前では、機器にプリインストールされた組み込み画像のみが意匠登録の対象とされており、事後的なアップデートにより追加された画面や、事後的に取得したアプリケーションの画面等は意匠登録の対象となっておりませんでした。すなわち、スマートフォン等にダウンロードしてからインストールするアプリケーション(所謂スマホアプリ)の画面は意匠登録の対象となっておりませんでした。
こうした運用は昨今のビジネス実体に適合したものとはいえないため、今般意匠審査基準の改訂が行われ、平成28年4月1日以降の意匠登録出願から、機器に事後的にインストールされたソフトウェアにより実現される機能の画面についても意匠登録の対象とされることとなりました。
ここで気をつけて頂きたいのは、登録の対象となる画面は、機器のローカルの記憶部に記録されたものに限られ、ネットワーク等の機器の外部からの信号により表示する画面(ウェブサイトの画像、遠隔の装置から送られる画像等)については登録の対象となっていないということです。また、従来と同様に、映画、ゲーム等のコンテンツを表した画像につきましても登録の対象とはなっておりません。
このように、依然として一部の制限はあるものの、本年度から意匠登録の対象の拡充もあり、画面UIについては特許権と意匠権の両面から保護することが益々有効となっていくことと思われます。画面UIの適切な保護のために、ご相談等ございましたらお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。