新しいタイプの商標制度について
新しいタイプの商標制度が始まり、一年以上が過ぎました。
特許法等の一部を改正する法律(平成26年5月14日法律第36号)により、商標法が改正され、平成27年4月1日より色彩のみからなる商標、音商標、動き商標、位置商標、ホログラム商標が新たに商標登録をすることができるようになりました。
平成28年7月現在、音商標出願は約440件で、久光製薬株式会社や小林製薬株式会社のCMでおなじみのフレーズをはじめとして、すでに43件が登録となっています。動き商標出願は約100件で、その内42件が登録となっており、位置商標出願は約300件中9件が登録となっており、ホログラム商標出願は16件中2件が登録となっています。
色彩のみからなる商標については、最も多い約480件の出願がなされていますが、いまだ全て審査中であり登録にはなっていません。色彩のみからなる商標についての審査に時間がかかっている理由の一つとしては、我が国の審査においては色彩のみからなる商標は、商品の色彩や役務の提供の用に供する物の色彩等を表示したものと通常認識されるものであり、本来的に識別力は認められないと考えられており、使用による識別力を獲得していることを立証する必要があるからです。
よって、現在色彩のみからなる商標の審査においては、各出願人から提出された使用による識別力に係る立証書類についての審査が順次行われているとともに、当該使用証拠と出願商標の色彩との同一性の判断についても審査されていると考えられます。特に、単一の色彩については、限りある色彩の一つについて権利保護を与えることとなるため、色彩の自由な使用を阻害するような保護は好ましくないと考えられており、公益的見地から見ても極めて限定的な登録となることが見込まれております.
上記の通り、新しいタイプの商標制度の出願状況を見てみると、企業のブランディング戦略において最も関心が高く、かつ使用頻度の高い色彩のみからなる商標及び音商標について、出願件数が多くなっています。また、日本においては、匂い、触感、味等については、まだ商標登録は認められておりませんが、米国等においては、既に匂いや触感の商標登録がなされており、今後は日本においても出願が可能となるかもしれません。
我が国においては、同様の制度を有する諸外国に比べても、比較的早いペースで多くの新しいタイプの商標に関する出願がなされており、今後はビジネス戦略を考える上でも、従来の文字や図形商標に加えて、音や色彩等についても権利保護をすることにより、様々なバリエーションのブランド展開を行っていくことが重要になってくると思われます。