ASEAN諸国におけるジェトロの模倣品対策事業のご紹介

 <ジェトロの紹介>

 2016年4月より日本弁理士会を通じて日本貿易振興機構(ジェトロ)に出向しております弁理士の石川です。半年間ジェトロ東京本部に在籍したのち、同年10月よりジェトロバンコク事務所に駐在する予定です。

 ジェトロでは、近年、経済成長の著しいASEAN諸国において日系企業等の模倣品対策の一助とすべく、模倣品被害の実態や模倣品の流通ルート、模倣品対応策などについて各種現地調査を行っています。また、各種模倣品対策事業として現地政府機関向け真贋判定セミナーや日本招聘事業等を行っています。今回は、ジェトロが模倣品対策事業として2016年7月に実施したミャンマー税関差止プロジェクトについて紹介します。

 <ミャンマー税関差止プロジェクトの概要>

 本プロジェクトは、2015年度よりスタートし、日系企業ブランドの模倣品の水際差止め事例創出と、ミャンマー税関でのノウハウ蓄積に向けて、ジェトロ・経済産業省と、日系企業と、ミャンマー税関とが三者で協力しあい、現地で税関登録を行ったブランドと商品について、税関での真贋判定トレーニングや協議を行い、集中監視を依頼するプロジェクトです。

 2015年度は試行的に日系企業1社から、ミャンマー税関職員向けの真贋判定セミナーを開催し、その後も官民で意見交換を実施するなどしてきましたが、税関で模倣品が差止められた実績はなく(2016年7月時点)、その要因として現場の人材不足、ノウハウ不足、真贋判定情報不足等が挙げられました。そこで2016年度は、本格実施として日系企業を4社選定し、輸入頻度増による疑義品の発見機会増と、消費者の安全に直結する商品も含めた商品多様化を図ることとしています。

 その具体的な取り組みとして、日系企業4社のブランドと商品について、模倣品と正規品の判定手法の解説を行う税関職員向けの真贋判定セミナーを7月29日にヤンゴンで開催し、ミャンマー税関から40名強の取締担当職員が参加しました。ミャンマー税関職員からは、模倣品と疑われる輸入品を発見したときの対応方法や連絡方法、また正規品の代理店舗や流通ルートの情報等について活発な質疑応答がなされ、終了予定時刻を大幅に超えてセミナーは終了しました。

 本セミナー後には税関本部・ヤンゴン港を訪問しました。税関本部では日本税関支援による電子通関システムMACCS(本年度11月に導入予定)について説明いただき、ヤンゴン港では現場の様子(紙ベースの通関業務、輸出入品の開梱・検査作業、X線検査など)を見学させていただきました。

 <今後のミャンマーの知財制度>

 ミャンマーでは知的財産権保護に関する法制度の整備が十分とはいえず、著作権法以外の知的財産権に関する法律が未だ存在しておりません。知的財産権保護に関する法制度が準備されることで、ミャンマーでの模倣品対策の実行性が上がるだけでなく、経済成長も期待されるため、早期な知財法案制定を期待したいところです。

最大都市ヤンゴンの聖地シュエダゴンパゴダ

最大都市ヤンゴンの聖地シュエダゴンパゴダ

首都ネピドーの国会前片道12車線道路

     首都ネピドーの国会前片道12車線道路

弁理士 石川勇介