特許調査のセオリー(2) 検索式の基本・再現率と適合率(2021.3.1)
特許調査を行う際に、調査範囲を画定する検索式の作成における重要な指標として、再現率と適合率(精度)があります。
「再現率」とは、どれだけ網羅的な検索ができたかを表す指標であり、情報全体から調査目的に適合する情報を拾い出すことができた割合のことです。
「適合率(精度)」とは、どれだけノイズが少ない検索ができたかを表す指標であり、拾い出した情報中に調査目的に適合する情報が存在する割合のことです。
以下の図に示す検索式①の場合、再現率は60%(存在する5つの適合文献☆から3つの☆を抽出)、適合率(精度)は30%(ヒットした10文献中に適合文献が3つ含まれている)となります。
ここで、検索範囲を広げて、再現率を向上させて網羅的な検索を行う場合、検索集合にノイズが増加するため適合率(精度)が低下してしまいます。逆に、適合率を向上させて検索集合の絞り込みを行うと、検索漏れの可能性が上がり再現率が低下してしまう可能性があります。
つまり、再現率と適合率にはトレードオフの関係があり、調査の目的に応じて検索式を作成する必要があります。
以下の図に示すように、侵害予防調査では、侵害の可能性がある権利を1つでも見逃してはいけないため、広く漏れがない網羅的である点を重視して再現率を向上させることが基本となります。
また、出願前調査や無効資料調査では、適切な情報のみを抽出する点を基本的には重視して適合率を向上させると良いでしょう。但し、調査毎に再現率と適合率のどちらを重視するかは、その背景や事情に大きく依存するため、再現率及び/又は適合率のどちらを重視するかは一義的に決まるものではなく、コストを考慮して、柔軟にバランスを取ることになります。
出願権利化等の弁理士業務に加え、法的知見を活かして知財に関する調査も多く扱っている経験を踏まえて執筆した著書、「侵害予防調査と無効資料調査のノウハウ~特許調査のセオリー~」(一般財団法人経済産業調査会)が発行されていますので、ご参考にして頂ければ幸いです。 詳細はこちらからご確認ください。 |
弁理士 角渕由英