弁理士と特許調査(2)法的判断を行うための証拠収集 (2021.10.6)
技術理解力をもつ法律家としての弁理士が行う調査とは、単なる特許調査とどのような点が異なるでしょうか。
無効資料調査と侵害予防調査について、以下の図に示すように、法的判断(法律適用)を行うための証拠収集である点で、弁理士が調査を行う意義があります。
弁理士が自ら、証拠収集の調査設計の段階から考え抜くことで、最終的な法的判断を適切に行うことができるような使える証拠(資料)はいかなるものであるのか逆算して仮説を構築して調査戦略を立案することになります。
無効資料調査では、進歩性における論理付けを考慮して必要な資料を想定して調査対象を探し出し、必要に応じてサポート要件や実施可能要件に関する技術常識を見つけ出すといった証拠収集が有効です。
弁理士が普段から行っている発明を理解して、特徴的構成を抽出しクレームドラフティング(クレームの作成)を行う際の上位概念化・抽象化は、侵害予防調査において、対象製品等を理解して、特徴的な実施行為を抽出し検索式を作成する際の上位概念化・抽象化にある側面で類似するものです。つまり、侵害予防調査においては、発明の抽出、クレームの作成業務を行い、発明品からクレームが生まれる過程を経験している弁理士がその一翼を担うことが好ましいといえるのではないでしょうか。
人工知能など、戦術(タクティクス)としての調査ツールの性能が向上していくにつれ、有用な資料をどう探すのかではなく何を探すのか、人間が自らの頭を使い調査戦略(ストラテジー)考えることが重要となるでしょう。
また、侵害予防調査においてリスクを想定して調査範囲を想定する場面など、人間が妄想力とも言える位に想像力を最大限発揮して「徹底的に考え抜く」ことがより一層重要となっていくはずと筆者は信じています。
出願権利化等の弁理士業務に加え、法的知見を活かして知財に関する調査も多く扱っている経験を踏まえて執筆した著書、「侵害予防調査と無効資料調査のノウハウ~特許調査のセオリー~」(一般財団法人経済産業調査会)が発行されていますので、ご参考にして頂ければ幸いです。 詳細はこちらからご確認ください。 |
弁理士 角渕由英