弁理士と特許調査(3)弁理士と調査業務 (2022.5.19)

一般的な特許事務所や法律事務所では、依頼者(クライアント)から調査の依頼があると、弁理士が自ら調査を行うことは少なく、調査の外注を行うことが多いのが実情です。
このような場合、調査依頼者からの依頼が調査担当者(調査員、サーチャー)に行き着くまでに段階を踏むことになってしまうため、調査の真の目的が上手く伝わらなくなったりして、解決すべき課題が解決しないことが生じ得ます。
最終的に取り得る対応を決定して起案をする弁理士が自ら調査を行わない場合、必要な情報が調査で得られなかったり、そもそも使える資料を見落としてしまったり、といったことが想定されます。

弊所では、調査を弁理士が自ら行うか、調査員と綿密に連携することで、このような事態が生じないように留意しています。
つまり、調査業務を弁理士と調査員で分業するのではなく弁理士が一気通貫で担当するか、少なくとも弁理士と調査員がチームとして協働することが、良い調査を行う上で重要であるといえます。
技術理解力を持つ弁理士が法的知見を活かして行う調査によって、調査により解決すべき課題を解決することにつながる可能性が高くなります。

筆者は、調査を行う弁理士として多くの事例を担当してきました。その中で得た知見として、弁理士が自ら調査を行うか、少なくとも弁理士が調査担当者と協働して調査の設計をすべきであるというのが筆者の持論です。

調査の設計と実行は、システム構築における要件定義とプログラミングの関係と似ているかもしれません。システム構築において、要件定義を行う者が自らプログラミングを行う必要は無く、特許調査においても調査設計をする者が必ずしも自ら調査を実行する必要はないと考えます。

一般的な弁理士は、調査について難しいという印象を抱いており、調査を自ら行うことが少ないです。しかし、調査が難しいというのはデータベースの使い方に慣れていないことや、特許分類に関する知識が乏しいだけで、調査の基本的な考え方は、それほど難しいものではありません。
重要であるのは、技術の理解力と法的な知見であるといえます。
弁理士が調査業務を行うメリットは多く、技術理解力に調査能力が加わることで、調査によって解決すべき課題を効果的かつ効率的に解決することができることを筆者は実感しています。

弊所では、技術動向調査(パテントマップ作成)、出願前の戦略的な先行技術調査、先行調査の結果を最大限に利用した特許出願の提案と権利化、製品の開発状況や想定される権利を的確に判断した侵害予防調査、懸案となる他者の特許を無効化するための資料を探す無効資料調査と無効論の論理(ロジック)構築、情報提供、異議申立、無効審判、侵害訴訟を一気通貫で行う体制を整えています。

出願権利化等の弁理士業務に加え、法的知見を活かして知財に関する調査も多く扱っている経験を踏まえて執筆した著書、「侵害予防調査と無効資料調査のノウハウ~特許調査のセオリー~」(一般財団法人経済産業調査会)が発行されていますので、ご参考にして頂ければ幸いです。

詳細はこちらからご確認ください。
「財団法人経済産業調査会 出版案内」(https://books.chosakai.or.jp/books/catalog/30596.html

弁理士 角渕由英