新型コロナウィルスのワクチンに関する特許権の効力について (2021.7.30)

昨年から、新型コロナウィルス感染症が流行し、世界中に大きな影響を与えています。
こうした中で、主に欧米諸国の製薬会社が、ワクチンの開発に成功し、急ピッチでワクチンの接種が進んでいます。その一方で、新型コロナウィルスの変異株も報告されており、今後も予断を許さない状況が続いています。
日本でも、医療関係者を優先して、ワクチンの接種が開始されました。その後も接種対象者が拡大されて、私や、私の家族、そして同僚たちも、ワクチン接種が進んでいます。ワクチンの接種によって、新型コロナウィルスによる重症化や感染拡大が予防されることを願っています。

知的財産の分野における動きとして、ワクチンの普及を迅速に進めるために、ワクチンに関する特許権の効力を一時的に停止すべきかどうかについて、WTO(世界貿易機関)で議論が交わされています。すなわち、ワクチンに対して取得された特許権の効力を停止することによって、ワクチンの普及に関する障壁(の可能性)を除こうとする動きが出ています。
特許権とは、新しい発明を創作し、一定の要件を満たした場合に認められる独占権であるとともに、技術革新を行うための根源になるものです。一方、途上国にとって、その技術革新を享受するための経済的負担が大きく、普及が進まないという弊害が報告されています。

特許制度は、発明の創作によって社会全体に技術革新(イノベーション)を促進することを目的とした制度です。発明を創作するためには、技術を積み上げ、更なる改善の望み、それを実現するための強い想いが必要です。この想いは、世界にワクチンを普及させ、新型コロナウィルスの終息を願う想いと、相反するものではありません。
WTOでは、新型コロナウィルス感染症に悩まされる世界の人々に、最新の技術革新であるワクチンを迅速に届けるための方策が議論されています。一日も早く、結論が導き出され、ワクチンの普及が進むことを期待しています。

私たち秋山国際特許商標事務所は、顧客である皆様の技術革新のお手伝いをさせていただき、より良い社会の実現に向けて貢献することができるよう、今後も精進してまいります。

弁理士 髙井英樹