中国の専利出願に係る包袋の取得について (2021.8.17)

 調査実務では、侵害予防調査や無効資料調査等の通常の調査とは別に、中国の専利(日本の特許・実用新案・意匠に相当、以下同じ。)出願に係る包袋(以下単に「包袋」という。)を取得する場合があります。
 なぜなら、中国にも日本や米国と同様に包袋禁反言の法理(司法解釈[200921号第6条)が存在し、包袋を取得する意義があるからです。
(司法解釈[200921号第6条 特許出願人、特許権者が特許授権又は無効宣告手続において請求項、明細書について補正又は意見陳述することによって放棄した技術方案について、権利者が特許権侵害紛争案件において再びこれを特許権の技術的範囲に取り入れた場合、人民法院はこれを支持しない)
 包袋の取得には、中国国家知識産権局(CNIPA)が運営する中国特許照会システムにおける電子包袋の取得と、中国国家知識産権局専利局の窓口における紙包袋の取得との二つのルートがあります。
 電子包袋の取得については、https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/18517/に詳細に紹介されています。
 一方、紙包袋の取得については、中国専利審査指南2010第五部分(専利出願及び事務処理)第四章(専利出願ファイル)の5.閲覧・複製に規定されています。
 電子包袋は、出願日又は中国国内段階への移行日が2010210日以前の専利出願に係る包袋書類や、出願人及び第三者が提出した中間書類等の一部の書類(例えば、出願人が提出した意見書等)が取得できない等、時期的制限や内容的制限が設けられていますが、ユーザ登録さえすれば取得できないもの以外のものは何人も無料で簡単に取得できる等の利点があります。これに対し、紙包袋は、電子包袋のような時期的制限や内容的制限が設けられておらず、公開後や査定公告後の出願であれば、上記のような電子包袋では取得できないものも原則として取得できますが、窓口において書面により請求するとともに証明書等を提示する必要があるため、手続きが簡単でなく、現地事務所に依頼するなど費用が発生する等の欠点があります。
 したがって、電子包袋を取得するのか、それとも紙包袋を取得するのかは、包袋を取得したい出願の出願日又は中国国内段階への移行日が2010210日以前かどうかや、出願人が提出した意見書等の中間書類等が必要かどうかに応じて個別に判断する必要があります。

専利代理人(中国弁理士) 湯 驍罡